COVID-19対応における環境影響評価法に基づく説明会の開催状況について
・著作者(文責) NPO地域づくり工房 傘木宏夫
・会員番号 00399
・著作期日 2020年6月13日
・掲載期間 無期限
・公開の程度 無制限
・タイトル COVID-19対応における環境影響評価法に基づく説明会の開催状況について
・掲載目的 環境影響評価制度の現状に関する啓発
・転載の可否 転載無制限
COVID-19対応における環境影響評価法に基づく説明会の開催状況について
1.目的
COVID-19への対応が求められている中、環境影響評価制度に基づく説明会(方法書・
準備書)の開催状況を調べた。
なお、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言は4月7日(同16日より全国へ拡大)に
発令されて、5月14日に39県で解除、同25日は全国で解除となった。
2.調査方法
環境省・環境影響評価情報支援ネットワークの「手続中の環境アセスメント事例」(
最終更新日2020年6月9日)の中から、意見募集の締切が3月1日以降の事業を対象とした
。
説明会の開催状況は同サイトと事業者のサイトから調べた。これらから把握できない場
合はキーワード検索により開催案内等の検出を試みた。
3.調査結果
①調査対象件数:17件(方法書13、準備書4)
②意見募集〆切:2020年3月17日から6月8日
③説明会中止:6件(方法書3、準備書3)
④中止6件についての環境省サイトでの記載状況
・中止記載なし:3件(内、1件は開催日の記載のみで中止の記載なし。他2件は
無記入)
・延期のみの記載:3件
以上のように、6件の事例については、COVID-19対応として、環境影響評価法に定め
られた説明会は開催中止を余儀なくされたことがわかった。
最も早く中止されたのは、一般国道464 号北千葉道路(市川市~船橋市)事業の準備
書で4ヶ所で予定されていた(2月23日~3月1日)。
一方、遅い時期まで開催されていたのは、鹿児島県南九州市知覧町風力発電事業の方
法書で3月22日に開催されたことになっている(web上での確認はできなかった)。
緊急事態が解除された今、ウインドパーク遠州東部風力発電事業は3ヶ所(6月16日
~18日)で開催を予定している。
4.意見
①今後は「集会方式」以外の開催方法も導入するべきである。
今回の急展開する事態の中で、当初予定していた説明会が開催できなかったことはや
むを得ないことである。
しかし今後は、ソーシャルディスタンスやリモート式会議システムの経験値が高まっ
ていることを踏まえて、説明会の「中止」という選択肢を無くすべきである。
とりわけ、リモート式会議システムは、「環境コミュニケーション」が求める利害関
係者の双方向の情報交流の可能性を高めるものである。「新しい日常」における?説明
会の開催方法に取り入れられていくできある。
環境省は、早急に、感染症対策など「三密」を避けるべき事態における環境影響評価
制度に基づく説明会の開催方法について、その選択肢を広げるための手引きの作成など
、対策を講じるべきである。
本学会においても、ICTの進展やsociety5.0政策を踏まえた情報交流のあり方につい
て研究交流を進めていく必要がある。
②説明会開催状況に関する説明責任を高めていくべきである
調査の中で、説明会の開催についての予告が掲示されているものの、最終的にそれが
開催されたのかどうか、別途に検索しないとわからない事例も少なくなかった。
また、環境影響評価情報支援ネットワークにも中止の事実が記載されていなかった。
説明会は、環境影響評価法に基づく手続きであり、重要な情報交流の手段である。し
かしながら、実態としては、開催の実施状況について無頓着な事業者があり、それを意
に介しない環境省の姿勢がある。
5.おわりに
COVID-19対策の経験は、情報交流面のみならず、環境影響評価のあらゆる部面で教訓
とすべきことがある。本学会でも活発な議論がなされることを期待したい。
傘木宏夫
NPO地域づくり工房
※調査結果一覧(PDF)をご希望の方にはE-Mailをいただければご提供します。