SEAの方法書づくりワークショップを開催
著作者(文責):傘木宏夫
著作期日:2004.06.04
転載の可否:無制限
「市民アセスなご」による先駆的な市民からの方法書づくりに学び、私の住む長野県中信地区で予定されていた廃棄物処分場計画の戦略アセス(立地選定のアセス)を想定して、市民からの方法書づくりを試みるワークショップを開催しました。
ワークショップは、地球環境基金が主催する「市民活動のための環境アセスメント講座」(全4回)が、今年2月に長野県松本市で開催され、その現地事務局を私が代表を務めるNPO地域づくり工房が担う中で実施されました。受講生は、市民をはじめ企業や行政、アセス調査会社の職員など30名でした。講座は、前半2回が座学で、後半2回がワークショップで学習を深めるという構成です。
前半の座学講座では、梶原成元さん(環境省環境影響評価課長)が制度のなりたちと仕組みを、島津康男さん(環境アセスメント学会会長・当時)が市民からセスについて、お話をしていただきました。
長野県が設置したでは、住民の反対などにより事業アセス段階で白紙となった廃棄物処分場計画について、極めて高い廃棄物の減量目標を前提にしても最小限必要な処分量を、3ヶ所に分散配置する前提で、土地利用や諸規制を踏まえて85地点の候補地を列挙し、さらに10ヶ所程度に絞り込んだ上で、戦略アセスにより立地を選定する計画をすすめていました。しかし、県が後から検討を開始した廃棄物条例との整合性を図る必要から、戦略アセスは、コンサルタントも選定されていたものの、中断してしまいました。
ワークショップでは、中信地区廃棄物検討委員会(委員長:原科幸彦・東京工業大学教授)がまとめた施設規模や施設管理の方針は踏襲しつつも、施設の分散配置や立地選定の方法は前提とせずに検討することにしました。受講生は、2つの班に分かれて、模造紙に示されたフォーマットを参考に、基本方針や立地の比較検討の仕方、環境影響評価で重視することなどを、意見を出し合いながらまとめました。
受講生の中には、焼却主義から脱焼却主義まで、廃棄物処理の考え方には違いがいろいろありましたが、合意づくりの方法ではスムースに意見がまとまりまし た。
検討委員会の計画にはない提案も数多く出されました。たとえば、「施設は分散配置せずに1ヶ所の方が環境影響も財政負担も少ない」とか、立地場所の選び方では、「市民の目に触れる場所」「工場跡地や工業団地」「国営あずみの公園の中」などユニークな選択肢も出されました。また、「コンサルまかせにしない」「環境調査に市民の参加を」「心配される問題を列挙してアンケートを」など、市民参加のアイディアも多く出されました。
このワークショップを試みてみて、受講生の学習効果は高かったと思います。実際、アセスのコンサルタントをしている専門家の受講生も、一般市民の受講生の視点や発想に大いに刺激を受けたと感想を寄せています。また、方法書を検討する際に、あらかじめ配慮すべき情報を市民から引き出す上で、このワークショップの手法は有効であったと思います。
この講座のまとめとなる第4回目は、「アセス講座の企画書づくりワークショップ」でした。この講座を受けたことが地域の人に知られてしまい、廃棄物処分場計画アセスについての学習会を企画することになったという想定で、どのような講座をやるかというテーマです。ワークショップでは、それまでの講座で学んだこと、わからなかったことを出し合い、それを踏まえて、誰を対象に、どこで、どんな構成で、どのような人に講師になってもらうかなどのアイディアを出し合います。
このワークショップは、受講生が新たな講座を企画することで、受講生にとっては、学習の到達度を確認するとともに、実践へのヒントとなります。また、主催者にとっては、受講生の理解がどこまで得られたかを知るとともに、運営の反省点などを知ることができます。
受講生の北山早苗さん(県議)は、ご自分のホームページに感想を掲載しています。「住民には様々な人がいて、色んな考えがある。しかし、ワークショップでは皆平等の意識に立ち、前向きに考えを出し合うことにより、お互いに良い影響を与え合い、思わぬ成果がある。いっそのこと重箱会議の県議会もこのようなワークショップ形式でやったらどう?でも、無理か。県議とは自分が偉い特別な人と思っている方々が多いから。」
長野県では、開発行為の計画段階でのアセス手続きを導入する条例も検討されており、私たちのNPOとしても市民啓発の面で寄与したいと考えています。
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