セッション「生態系アセスメントにおける定量的評価のあり方とその展望」報告 著作者(文責):日本エヌ・ユー・エス(株) 中村純也
著作期日:02.12.11
掲載期間:未定
転載の可否:転載許可不必要 環境アセスメント学会2002年度研究発表会において「生態系アセスメントにおける定量的評価のあり方とその展望」が開催されましたのでご報告いたします。 ◇日時:平成14年9月29日(日) 13:00~16:10
◇場所:明海大学(千葉県浦安市明海8) 2102教室 コーディネーター:田中章氏 武蔵工業大学 プログラム 1.趣旨説明:田中章氏 武蔵工業大学
2.ケーススタディ報告
(1) 雨嶋克憲氏 (社)日本環境アセスメント協会
(2) 渡辺敦子氏 東京大学大学院
(3) 百瀬 浩氏 国土交通省
(4) 林 文慶氏 鹿島建設株式会社
3.コメント
(1) 小野勇一氏 北九州市自然博物館
(2) 清水 誠氏 東京大学名誉教授
(3) 大島康行氏 (財)自然環境研究センター
4.パネリスト発表
(1) 上杉哲郎氏 環境省
(2) 鷲谷いづみ氏 東京大学
(3) 柵瀬信夫氏 鹿島建設株式会社
(4) 藤原宣夫氏 国土交通省
5.ディスカッション 環境影響評価法では、「生態系」への影響を把握するとともに、事業に伴う環境影響について「回避」、「低減(最小化)」、「代償」という手順によりミティゲーションを検討することが求められている。しかしながら、生態系の捉え方、定量的評価の考え方等には様々な見解があり、生態系アセスメントのための共通の検討基盤が確立されていない状況にある。本セッションは、このような現状を踏まえ、生態系の定量的評価のあり方、及び今後の展望について議論を行うために開催された。
セッションの形式は、新しい試みである4件の生態系アセスメントに関するケーススタディ報告の後、3名のコメンテーターから意見が述べられ、パネリストによる生態系アセスメントの定量的評価のあり方についての討議、会場の参加者を含めた質疑応答が行われた。 1.趣旨説明:田中章氏(武蔵工業大学) 生態系アセスメントを環境アセスメントの全過程(スコーピング、調査・予測・評価、環境保全措置、事後調査)の中でどのように捉えるべきか、また、ノー・ネット・ロスを基本とするミティゲーションを行うために生態系の定量的評価をどのように進めるべきか、を議論したい。 2.ケーススタディ報告 生態系アセスメントの実務者(コンサルタント、ゼネコン)及び研究者から報告があった。 (1)「トウキョウサンショウウオのハビタット適性指数(HSI)モデル(案)の作成とHEPのケーススタディについて」 雨嶋克憲氏((社)日本環境アセスメント協会) 生態系の価値を定量化することを目的として日本環境アセスメント協会(以下、「アセス協会」という)・研究部会において行われた研究であり、繁殖期のトウキョウサンショウウオを対象生物としたHSI(Habitat Suitability Index)モデルを構築し、HEP(Habitat Evaluation Procedure)を用いた架空の面開発事業によるケーススタディを行った。事業区域及び代償ミティゲーション区域における累積的HU(Habitat Unit)を算定し比較評価を行い、代償ミティゲーションの改善までの工程を検討した。
HEPは合意形成のツールとしての活用が期待できるが、HSIモデル構築に必要な基礎データが整備されていないという問題があり、これらを管理・公表する機関が必要である。また、我が国では、事業に際してノー・ネット・ロスを達成することは困難な場合が多いという現状から、ミティゲーション・バンキング制度の導入、広域的・計画的な視点に立った保全計画及び目標設定の検討を行い、地域単位での目標設定とコンセンサスを形成していくことが必要である。 (2)「生態系評価において注目すべき要素~水辺移行帯の場合」 渡辺敦子氏 東京大学大学院 茨城県霞ヶ浦の水辺移行帯を例として、生態系アセスメントをどのような点に注目して実施すべきかについて検討した。
生態系は、多要素の複雑な相互関係によって成立しており、空間的・時間的に変動する生態学的プロセスを有することから、影響評価のためには、生態系における関係性の要となる要素(=重要要素)に注目し、これを軸として、情報の統合、定量的評価、環境保全措置(ミティゲーション)の検討等を行うことが重要である。
例えば、水辺移行帯では、環境勾配、季節的な水位変動といった物理的環境因子が重要要素となるが、その他に環境要素や生物間相互作用を改変する可能性のある侵入生物のふるまいや、二次的自然における人為的攪乱パターン等についても重要要素として着目することが考えられる。 (3)「国土情報基盤を活用した環境影響評価と希少猛禽類の保全」 百瀬浩氏 国土交通省 国土交通省では、国土情報基盤を活用した、猛禽類の生息環境の予測・評価及び保全のための手法の検討を行っている。国土情報基盤は、土地利用、環境など、国土に関する基盤情報をデジタル情報として構築、管理し、情報の共有を図るものである。情報基盤の活用により、広域的な環境保全や国土管理を整合しつつ進めると共に、環境アセスメントにおいても定量評価のための基礎情報としての活用が期待される。ここでは、GISを用いた猛禽類の生息環境予測モデルについて述べ、これを活用した猛禽類の保全のプロセスについて提案を行った。
開発事業による影響と生息状況との関連性が十分に定量化されていないなどの問題はあるが、計画段階から影響の少ない事業の進め方を検討するとともに、より柔軟な保全、オフサイトの代償ミティゲーションの検討や、国が広域的な環境保全施策を推進する上での政策支援ツールとしての活用等、今後ますます適用の幅が期待される。 (4)「ウェットランドの再生技術-HSIを用いたチゴガニの生息環境評価-」 林文慶氏 鹿島建設株式会社 沿岸生態系の重要性が認識されており、その連続性を考慮した再生が必要と考えられている。そこで、現在、ウェットランドの再生技術として、環境の定量化のためにHSIを用いたチゴガニの生息環境評価についての検討を進めている。
生息地適地評価モデルの構築により、生息場そのものを評価することが可能なるだけでなく、沿岸再生技術の形状・配置・材料・勾配の検討や、造成した構造物の効果を評価するためのツールとしての活用も期待できる。 3.コメント ケーススタディー報告を踏まえて、環境省「生物の多様性分野の環境影響評価技術検討会」の座長、分科会座長を担当された専門家からコメントが述べられた。 ・ 小野勇一氏(北九州市自然史博物館) 多くの環境要素の中で生活史の各ステージを規定する要素はそれほど多くない。したがって、生物、生態系への影響を評価する場合は、どの環境要素が重要なのかに着目する必要がある。
また、生物、生態系の評価手法については、可能な限り簡便な技術を開発する必要がある。開発にあたっては、生物の生活史、性、状態等に留意する必要がある。 ・ 清水誠氏(東京大学名誉教授) 生物と環境要素との関係については、難しい問題ではあるが、ある程度強引にでも定量的な評価手法を検討し、関係者で検証し、整理し、共有化していく必要がある。環境省、環境アセスメント学会がこのような取り組みを後押ししていくということも考えられる。
生態系アセスメントに当たっては、どのような情報が必要となるのかについて示す必要がある。 ・ 大島康行氏((財)自然環境研究センター) 生態系の保全や影響評価の前提として、これらの取り組みが合意形成のための手段であるということを認識する必要がある。
HEPに代表される米国で開発された生態系評価手法の適用に当たっては、わが国では欧米に比べて生態系の構造が箱庭のように複雑に構成されていることを踏まえて、これらがどのような環境を構成し、指標するのかを把握する定量的手法が必要である。なお、HSIのうち、SIについてはその選定の考え方や、それが自然の再生に結びつくことが重要である。
また、基本概念について市民までが共通概念を持つ必要がある。マクロな環境が人間に与える影響を検討するという視点で行う必要がある。
生態系は常に変化するものであることから、過去にその環境がどのような状態であったのか、過去との比較により現状把握を行うことも重要である。例えば、生態系の保全や影響評価を国土交通省の施策(流域圏の保全、都市再生プロジェクト)と調整しながら検討を進めていけば、戦略的環境アセスメント(SEA)へと展開していくものと考えられる。 4.パネリスト発表 コーディネーターの田中章氏から、それぞれの立場から次のポイントを明確にした上で論じるよう要請があった。
① 定量的評価の必要性:生態系の定量化において、主体ごとの「質」×「量」(「量」は「空間」×「時間」から構成される)の評価軸を明確にする必要があるが、把握する側及び配慮する側のそれぞれの立場からこれらをどのように捉えているか。
② 代償ミティゲーション:制度面での課題と展望という観点から、一つ一つの事業単位では限界があり、戦略的な土地利用が必要であり、広域的な視野にたった、事業の上位計画や政策段階での検討やミティゲーション・バンキングの導入等の制度面での充実についてどのように方針を持っているか。 (1)「生態系の定量的評価手法の課題と展望」 上杉哲郎氏(環境省総合環境政策局環境影響評価課) 環境アセスメント制度全般において生態系の保全を図っていく上で、今後取り組むべき課題が幾つかある。
定量的な生態系評価については、最善の環境保全措置を検討していくためのツールであり、客観的な判断材料を提供することに意味がある。地域特性に応じて生態系を特徴づける生物に注目した評価モデルを構築し、定量的な評価手法を開発することが必要であり、各手法についてオープンな議論を行い、試行・検証・改良を重ねていく必要がある。
また、このような検討を進める上で、生態系に係る各種情報基盤の整備、人材の育成・確保が必要となってくる。環境省としても、生態系アセスメントに係る技術検討(ガイドラインや手引書)やアセス図書の電子化、生物多様性の観点からのベースマップ作成手法の検討、先進的取り組みの奨励等を進めているが、環境アセスメント学会を通じた取り組みについても期待している(例えば、地域ごとの生物多様性保全計画の作成等)。 (2)「関係の要諦をなす要素に注目する評価・モニタリング」 鷲谷いづみ氏(東京大学) 生態系は、要素間の関係によって決められるものであり、非常に複雑で不確実性を伴うものである。環境影響評価法では、生態系を上位性・典型性・特殊性から特徴づける生物によって捉えることとしているが、これらを網羅的に短時間で定量評価する、及び影響緩和の方策を考えることは難しい。一方、生態系の健全性、持続可能性については、自己修復性を持つ範囲を超えると修復が困難となるメタ安定性の状態にあり、生態系に含まれる要素の中にはメタ安定性を大きく支配する「関係の要諦をなす」要素が存在する。
したがって、生態系への影響を予測する際には、このような生態系の要をなす要素に着目した評価が必要と考えられる。重要要素としては、物理環境条件(地質、地形、水文等)、侵入生物(移入種等)等が挙げられるが、例えば、霞ヶ浦の水辺移行帯であれば、水位変動が重要要素となる。
生態系アセスメントに関しては、住民等との情報交流のためのツールであることを踏まえて、環境アセスの実務者だけでなく、一般の人々の関心事、懸念等を含めて世界観が共通化される必要がある。したがって、HEPを含め、定量化と情報交流が相互に成立する柔軟な手法を提案していくべきである。そこでは生態学会との連携も考えられる。
このような取り組みにより、環境アセスメントが、要素還元的科学から、社会・生態系システムの関係性を捉える「新しい科学」として成立していくことを期待したい。 (3)「内湾の食物連鎖復活、調査から実用化」 柵瀬信夫氏(鹿島建設株式会社 環境本部) 自然環境の修復は、建設業界における新しい市場として着目されている。その模索の一つとして、「コンクリート護岸が海生生物(カニ)の生息にとって適切でないのか?」という疑問に端を発し、様々な調査・検討によってカニ護岸パネルという商品を開発し、内湾の食物連鎖の復活(ハゼを増やすために、カニを増やす)を目的とした施工を行った事例がある。
これまでコンクリート護岸は海生生物の生息に適さないと認識されていたが、護岸の状況を調査した結果、カニが生息していることを確認した。さらに、カニが生息できる条件を検討した結果、コンクリート護岸の色、照り返し、表面の状態、カニが移動できる目地の存在、住み家となる穴の存在等が必要であることが分かった。
これらの条件を満たすものとしてカニ護岸パネルを開発し、埋立地の護岸において実証試験を行った結果、1ヶ月程度でカニの成育が確認できるようになった(なお、内湾の食物連鎖の確認調査は、市民参加型のイベントを開催し、市民の協力を得てハゼ釣り大会を実施した。)。
カニ護岸パネルについては商品化を行い、東京都の有明北埋立事業において施工した。
業務と通じて、生態系については一般の人々が容易に理解できる言葉で説明していくことが重要であると感じた。 (4)「開発事業者の視点からの生態系評価の課題」 藤原宣夫氏(国土交通省技術政策総合研究所) 国土交通省は、所管事業の事業者であり、自らが環境アセスメントを実施しているが、生態系影響評価の定量化については、環境アセスの技術者だけでなく、市民にとっても解かり易い手法を確立することが重要と実務者の立場から考えている。
また、定量評価にあたってはマニュアルの整備が必要であり、その中で具体的な方法や判定基準を示し、社会的認知を得ることが不可欠である。
HEPの導入については幾つかの課題がある。わが国ではHSIモデルがほとんどないことから、開発事業者が環境アセスの都度にHSIモデルを構築することになり、モデルの信頼性についての懸念が残される。したがって、わが国でもHSIモデルを認知する機関を設置する必要であるが、環境アセスメント学会が認知機関となることも考えられる。また、HEPにより評価対象種にとって良好な生息場であると評価されたとしても、その種が実際に生息しているのかについては証明できないという問題がある。
一方で、生態系の評価については、事業単位だけでなく、地域全体の広域的な評価と結びつけていく必要がある。さらに、オフサイト代償ミティゲーションやミティゲーション・バンキングへの展開も含めて、国土交通省は省内及び他省庁との連携を進めていくべきだと考えおり、環境アセスメント学会においても生態系影響評価の検討を深めていければと期待している。 パネリストの発表内容を受けて、コーディネーターの田中章氏から生態系アセスメントについてなぜ定量化に着目する必要があるのかについて以下の意見が述べられた。
1. 環境アセスメントが純然たる科学ではなく、情報公開のシステムであり、主体は一般市民である。したがって、環境アセスメントの内容をできる限り判り易くすることが求められるため。
2. 環境影響(インパクト)とそれに対する環境保全措置(ミティゲーション)のバランスを定量的に示すことが必要なため。 5.討議 意見:中越信和氏(広島大学)
国際景観生態学会では、理論だけではなく、実際に活動を起こすことが重要であると考えられており、相対的な比較によるものであっても、生態系アセスメントの定量化は必要と考えている。環境アセスメント学会も具体的なアクションを起こすことが重要である。ただし、モデルを構築する場合には、仮想空間における検討だけではなく、タイプ標本としてモデル地区を指定して具体的に検討する必要がある。
HEPのような評価手法については、米国にように面積的に大きな生息地を想定していることから、わが国で適用する場合には、例えば、モザイク状に隣接するハビタット間の関係や、流域間のネットワークなど、島嶼という日本での特殊性に配慮する必要がある。その場合、あまり内部構造にこだわり過ぎず、開発により何%が失われ、何%が周辺で残るのか、さらに、その何%が良いのか悪いのかを地域毎に考えることが重要である。わが国の自然環境は人為的な管理の上に成り立っていることから、文化的側面も含めて、自然環境の保全・管理に係る過去の情報についても考慮する必要がある。
なお、環境アセスの業界では、モデルの開発・応用等において、会社名が出ることはあっても、個人の業績が評価されることがほとんどない。環境アセスの技術向上を図る上でも、環境アセスメント学会でフォローしてはどうか。 質問:長谷川弘氏(広島修道大学)
生態系影響評価に関して、米国で開発されたHEA、HEP、ネットロス、ネットゲインといった概念は理解できるのだか、(HEPの)HSIを点数化して、貨幣換算すれば、生態系や自然環境の経済評価ができると考えて良いのか。
また、これらの手法は、生態系や自然環境を中心とした非利用価値の定量化を行っているが、人の利用価値に重点を置いて評価すべきではないのか。
回答:田中章氏(武蔵工業大学)
HEPは、生態系をある野生生物のハビタットの適正として数量化するものであり、もともと経済評価のための手法ではない。 米国では、代償ミティゲーションが義務つけられていることから、実際に生態系を維持、保全していく必要があるのかという生物本位の評価であり、貨幣という尺度で検討するための人間のための仕組みではない。
一方、HEA(Habitat Equivalency Analysis)は、HEPを基礎としながらも、油汚染された海岸の生態系復元を補償する金額を算定するための手法である。そのためHEAではハビタットの将来価値を現在価値に割り引くことが行われている。HEPはあくまでも野生生物、自然生態系を実質的に保全するための評価手法であることを再認識することが重要である。 意見:会場参加者(明海大学)
生態系の保全に係る施策については、地球規模、国際的規模、国内的規模、地方(regional)、地域(local)、コミュニティといった様々なレベルに応じた適切な対策を検討していくべきである。また、生態系の定量化については、政策等に反映していくためにも是非とも必要である。 意見:会場参加者
わが国では生態系の定量化についての実績が少なく、米国の手法を手本として検討を進めようというのが実情であると思うが、生態系アセスメントについては学会でオープンに議論すれば良い。また、環境アセスメント全般に係る問題として、その結果が公表されないということがあるが、情報の公表や蓄積について学会等でのバックアップが必要と考えている。 意見:浅野直人氏(福岡大学)
環境アセスメントについては、絶対的評価を行うことが目的なのではなく、例えば、開発事業を行う上で周辺環境を含めてどのように保全するかというように、広域的な観点からの議論に繋げていくことが重要である。生態系アセスメントについても同様で、どういう意味とどういう限界があるのかの議論が必要である。 意見:鷲谷いづみ氏(東京大学)
生態系モデルの重要性は分かるが、モデルの性格、限界、及びその有用性を考えることが重要である。また、モデルを利用する者とその解釈を一般に伝える役割を持つ者がこのことを認識する必要がある。
なお、HEPのうち、HSIについては、予測よりもコミュニケーションのツールとして有用と考えられる。生態系の重要要素とHEPの開発は関連付けられると思う。 6.パネリスト等からの発表についての感想 (1)上杉哲郎氏
環境アセスメント学会を通じて、色々な試みを行っていきたいし、アセス学会の効果を期待したい。そのために、会員の中で、生態系アセスメントの限界や何を目指すのか等といった課題を共通に認識して整理して行くことが必要と考えている。 (2)柵瀬信夫氏
環境アセスメントを行う工学系の技術者は、専門的な知識を有しつつも、中学校レベルの言葉で一般の人達とのコミュニケーションを図っていくべきである。 (3)藤原宣夫氏
事業者だけでミティゲーションを行っていくことには現実には困難なことから、省庁間でどのように行っていくべきかを関係づけることが重要である。 (4)大島康行氏
生態系アセスメントは、不確実でも定量化を行うべきである。数量化の問題だけではないが、環境のある部分の定量的評価ではなく、地域全体の評価に繋げていきたい。 閉会に際して、コーディネーターの田中章氏から次のことが述べられた。
生態系アセスメントについて、生態系を定量的に把握し、一般市民との情報交流や合意形成を目的とした手法の開発が不可欠とされており、技術面、制度面の双方について検討を進めていく場として、この学会を位置付けたい。一方で、情報基盤の整備や人材育成の面での課題も残されており、手法の開発とこれらの課題解決に向けた環境アセスメント学会を軸とした取り組みが望まれる。
今回の議論では、生態系アセスメントをどのような土俵で行う必要があるのか、共通の認識に明確にするための意見交換は行われたと思う。今後は、具体的な事例を交えた議論になっていくことを期待している。わが国における生態系アセスメントの検討は始まったばかりであり、今回の成果というよりもこのような議論を継続することこそが重要であると考える。今後の本学会研究発表会においては、例えば、実際のHSIやHEP事例、さらにはその結果としての代償ミティゲーション事例などの具体的事例がいくつか発表され、より深い議論が展開されることを期待したい。 以 上 (文責:日本エヌ・ユー・エス㈱ 中村純也) |