環境アセスメント学会制度研究部会第7回定例会議事概要
著作者(文責):上杉哲郎
著作期日:平成19年9月30日
転載の可否:否
環境アセスメント学会 制度研究部会第7回定例会 議事概要
1.日時:
平成18年9月14日(木) 19:00-21:00
2.場所
環境省第1会議室
3.テーマ
「河川事業の計画段階における環境影響の分析方法の考え方」の試行について
4.話題提供者
国土交通省河川局河川環境課 河川環境保全調整官 小俣 篤 氏
5.参加者
22名
6.議事概要
○河川計画の全体像
治水、利水を目的とした河川法(昭和39年制定)に沿って河川行政は進められてきたが、それまでの河川改修に対する批判、組織の内部の反省があり、平成2年に「多自然型川づくり」という通達を出した。その後長良川河口堰で環境問題がクローズアップされたこと等もあり、平成9年に河川法の改正を行い、環境も目標とした。この改正で、「河川整備基本方針」と「河川整備計画」を作成することとなった。ポリシーに相当する「基本方針」は超長期の見通しで河川管理者が決定し、プランに相当する「整備計画」は、当面20-30年程度における河川整備の見通しを、河川管理者が学識者や地域の意見を聞きながら決定する。
○「環境影響の分析方法の考え方」について
河川法の改正で、「河川整備計画」策定の際には地域の意見を聞く、というスキームも入り、かなりSEA的要素が盛り込まれた。しかし、治水、利水が「主」、環境が「従」となりがちであったので、より環境にフォーカスするために平成14年に作成したのが「河川事業の計画段階における環境影響の分析方法の考え方」である(本稿では以下「考え方」とする)。手続的には事業アセスとほぼ同様ものが定められている。複数案の比較も行うこととなっており、治水・利水の面で立てた複数案の影響を環境面から分析する、という形になっている。
○検討の流れ
まず、対象とする流域・河川について、歴史的要素、社会的要素、自然的要素等を踏まえて「望ましい姿」を描く。また別途実施している「水辺の国勢調査」(一級河川については全て蓄積がある)等に基づいて、特に生物等に係る「現況」についての情報を収集する。人の活動の影響を知るため、川の歴史的変遷を調査なども行う。
次に、当面20-30年でどのように河川の整備と保全を進めていくのか、という複数案を立てる。例えば、洪水時の安全度(治水)や渇水時の確保流量(利水)の組み合わせで案を提示したり、実現手法(ダム、河道掘削、遊水池等)の組み合わせで案を提示したりする。環境面での要素で言えば、魚道を確保する、湿地を再生するといったものが考えられる。
これらの案をマトリックスにして比較分析を行う。また地図に落とし込んで、生物の生息状況や事業実施区域や影響などを図示して示す。これらの案について、社会面やコストの比較も含めた上で最終的に総合判断を行う。
○「考え方」の試行
これまで4箇所で試行が実施されている。必ずしもマニュアル通りではないが、考え方は沿っている。
五ヶ瀬川では平成16年に「基本方針」を策定したのを受け、流域委員会を設立し、整備計画の策定に着手した。6種類の複数案を立て、最終的な評価の結果、環境面では2番目に良い案が「整備計画」として決定されている。これらの試行を受け、今年度から来年度にかけて「考え方」の見直しを実施する予定。
○質疑応答
Q:五ヶ瀬川の複数案の立て方は、堤防の位置、河道掘削に係るものであったが、遊水池を設けるといった流域全体の構成は検討しないのか。
A:五ヶ瀬川の国直轄区間では洪水調節施設が元々なかったが、洪水調節が必要な川では治水面の同じ機能を確保するのに、ダムでやるのか、遊水池でやるのか、ということは比較検討してやっている。
Q:「考え方」改正のポイントとなりそうな部分は。
A:従来から環境調査等をやっており、現場は、仕事に重複があると感じている。一方で、「環境」の目で対象と項目を決めているので、環境影響をきちんと見られる、という良い面もある。
Q:手続を入れたことで、増えた負担は。
A:元々計画づくりの中に取り込まれていることが多く費用と時間は以前より多少かかるが、「考え方」の手続を踏むことで増えるのは環境影響分析の丁寧さの部分。調査自体は、水辺の国勢調査等でカバーできる部分が多い。
Q:上流にダム、下流で河川改修というのは、基本方針と関わる部分もあるが、住民関与はどう進めるべきか。
A:河川管理者は安全の部分に責任を負っているということが基本方針と整備計画が分かれる理念。責任の部分にまで一般に意見を求めるということではない。
Q:高水の設定で環境影響のスケールはほぼ決まってしまうと思われるが、その点をアセスする余地はないのか。
A:基本方針でターゲットとするような非常に遠い将来のことを、影響評価できるのか、ということ。治水は100年の計で見えにくいということで、整備計画を20-30年の計画としたという経緯があったと思う。
Q:個別事業がアセス対象となる場合、調査の重複の問題が出てくるのではないか。
A:事業アセスを未実施のものは現時点の情報でやる、既に事業アセスを進めているものについては、そちらの情報を使ってやる、というのが現状。あまり重複は起こらないと思う。
以上
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