環境アセスメント学会制度研究部会第14回定例会議事概要
1.日時:平成20年3月11日(火)19:00~
2.場所:明治大学アカデミーコモン9階会議室
3.テーマ:計画段階環境影響評価制度の現状と今度の課題について
4.話題提供者:明治大学法科大学院 柳 憲一郎 氏
5.参加者:23名
6.概要
主な戦略的環境アセスメントの比較、環境省の戦略的環境アセスメント導入ガイドライン及び某県計画段階環境影響評価技術指針(案)について話題提供者より報告が行われ、意見交換が行われた。
7.質疑応答及び意見交換
様々な内容について活発に議論が行われた。概要は次のとおり。
○ 某県計画段階環境影響評価技術指針(案)の予測手法では、環境への負荷の量等を定量的に把握する手法を基本とすることになっているが、定量的に把握できず定性的に把握する場合もあると思うが、その判断は自治体が行うか事業者が行うか決まっているか。
・ 計画策定者がまず判断するが、定性的な手法をとっていたとしても、手続の中で自治体が関与する場面において、自治体が、定量的に把握できるのではないかと判断した場合は、定量的に把握するよう計画策定者を指導することになる。
○ 予測の手法を、定量的に把握する手法をとるとなれば、道路事業では交通量、構造等を計画の熟度が低くても決めなくてはいけないことになり、いろいろなパターンを要求され際限がなくなるのではないか。また、交通量等を決定していけば、住民に対し、計画がもう決まっているではないかという誤解も与えかねない。
・ 都の計画アセスでは現状を把握するための交通調査を行い、将来交通量が現況の何割増しになるかという予測を立て、バックグラウンド値がどう動くかシミュレーションを行っていると思われる。
・ 計画アセスにおいて定量的な予測を行おうと思えば可能だが、その予測値が確かかどうかは疑問がある。
・ 定量的な予測は一つの課題である。バックグラウンドが変動すれば予測値も変動してしまう。あくまでもこういう場合にはこうなるという形で、参考として示すやり方はある。定量的な予測よりも、複数案の相対比較に意味があり、難しい課題と思う。
○ 某県の技術指針(案)の複数案の検討において、複数案を作成することが困難な場合は単独案とすることになっているが、単独案でもSEAは行うのか。
・ 案件によっては位置・規模で複数案ができるかもしれない。県の事務局もどうするか悩んでいるところだが、単独案でも制度に載せたいとは思っている。
・ 単独案でSEAを進めていき、定量的な予測等も行うとなるとほぼ事業アセスになってしまうため、単独案の場合、SEA手続は行わず、事業アセスをすぐ行えるようにした方がよいのではないか。大規模な事業だけSEA手続を行う又は小規模な事業はスクリーニングをかける方がいいのではないか。
・ アセスは計画のそれぞれの段階で環境配慮を行おうとするものであるため、単独案だからといってSEAを行わないということにはならない。単独案でも、事業を行わず現況が推移した場合と事業を実施した場合の比較を行い、その中で環境影響をいかに下げていくか検討することが重要である。予測を定量的に行うことにこだわるのではなく、相対評価をどうするかが大事である。そして、それを突き詰めていくと総合評価をどうするかが課題となる。
○ テアリングの制度化について考えてほしい。事業者は事業に時間がかかることを嫌がる。テアリングやスクリーニング、スコーピングによって、手続にそれほど時間をかけなくてもすむようにしないといけない。
・ SEAを条例で定めていれば、事業アセスも条例なので、テアリングは可能だが、SEAを要綱で定めている場合は、事業アセスの条例を無視してテアリングすることはできない。
・ SEAの要綱では民間事業は対象ではなく、県事業だけが対象である。
・ SEAは長くて1年、短くて3ヶ月、費用が100万円ぐらいでなければ十分に機能しないように感じる。
○ SEAについて公衆もよく理解していない部分がある。「事業のここが固まっていないじゃないか、その部分の情報を出せ」ということもある。どこまでをSEAで行うのか線引きが必要である。事例を作って、SEAではこれ以上はしないということを決めておかないとSEA制度が定着するのに時間がかかると思う。
○ 県の技術指針(案)では、社会面及び経済面を含めて評価できることになっている一方、国(環境省)のガイドラインは環境面だけだが、今後の展望についてどのように考えているか。
・ 国(環境省)のものは環境部局が関与する制度として構築していくことが趣旨となっている。
・ 社会面・経済面も評価のマトリックスに入れていくことは重要である。
・ 将来的には、持続可能性アセスとして、持続可能性で判断していくものと思う。
・ 多段階的にアセスが連動して行われ、環境影響が緩和されていく仕組みになれば良いが、日本は仕組みがしっかりしたものでないといけないと考える国民性であり、国によって仕組みは違ってくる。日本ではどういう制度が定着するかは試行錯誤していかないといけない。
・ また、コミュニケーションも重要である。アセス制度について国民も学んでいかないといけない。事業者・行政・住民がコミュニケーションをとっていかないといけない。アセス制度は合意形成ありきの制度ではない。アセス制度が目指すものは、環境影響を緩和することであり、そのための情報をどうとっていくか定めたものである。そのためには、もう少し試行錯誤が必要である。
○ 「計画」という言葉だが、今、SEAで対象としているものは計画と呼ばなくてもいいのではないか。計画というと、国土計画や道路なら中期計画というイメージを持ち、そのような計画でいったいどうやってSEAを行うのかということになってしまい、SEA制度の定着に時間がかかってしまうように思う。
・ 今のSEA制度が対象とする計画がどの段階を指すのかは、事業実施の前のものに決められている。事業が実施される確実性が高いものを対象としている。
○ 自治体によってSEA制度について合意できるところは違うので、自治体が入りやすいところからSEA制度をまずは作ってもらって、3~5年で見直していくというやり方がよいのではないか。国が理想を定めて自治体が合わせようというものではなくていいのではないか。
・ 国(環境省)のガイドラインは環境面だけが取り上げられているが、県のレベルで実態に合わせたものができるのなら、それは良いと思う。
・ 交通分野では、イギリスにおいては費用対効果のような議論は1970年代に終わっており、今は国際競争力や格差を評価するような状況にある。
・ 自治体でいろんなバリエーションの制度を持つことは、全体の制度を作る上でも有効と思う。
以上